コラム

第3話 <悩んで楽に キャリア統合プロセスの経験>2007-02-22



 キャリアビジョンについて悩むかたが、ご自分の力で楽に生きていただけるよう、微力ながら、私にできることを全てお伝えすることを使命として、これからこのHPに記し続けていきます。


 私自身のセルフキャリアカウンセリング風自己紹介で、<世襲的キャリアからスローキャリアに至るまでの空白期間>について触れました。空白とは、体験が経験として蓄積されないという意味です。当時の私は自分を客観視できなくて、社会保険労務士開業の前後3年ずつ、この空白が6年間つづいたこともお話しました(1988~1993)。6年間はとても長い時間です。自己盲点に気づくのはむずかしかったのです。


 しかし、後に、この空白が、事実を否認と歪曲なく虚心に把握することの大切さを学び、【失敗力】を身につけ、キャリア統合プロセスに繋がっていったのでした。空白期間は、人生が私にプレゼントしてくれた最大の贈り物だったのです。





 人は不安になったり悩んだりすると、外界との接触を望まず行動をとめ、事実の世界から解釈の世界に入り堂々巡りにはまりこむ時期がありますね。でも、大丈夫。苦難の末、いつか必ず明るい方向が見えてきます。どんな苦難があっても、<人>は、自分の人生のあるじとして生き、苦難を適切に意味付けし、問題を外在化してそれを解決し、望みを対象化してそれとの楽な関係性を同義反復していく。こういったストーリーを創造し演じていけるように、必ずなっていきます。


 <人>には、皆過去にノンイベントの1ページ、つまり期待した事が起きずに暗く影った1ページがあるのです。しかし、転機として乗り切った<人>はその1ページを破いて捨てるようなことはしません。なぜなら、ノンイベントは人生が<人>にプレゼントしてくれた最大の贈り物なのです。それは、その<人>の最重要課題なのです。この大切な1ページを、決してなかったことにせず、きちっと意味付けをして、自分のキャリアを確認しながら、行動し続ければ、必ず再出発していくことがきます。それが転機を乗り越えるコツなのです。


 <人>は、失敗から学び、学んだ知恵をUSEFULにする発想で、前職の職能を単なる部品でなく統合された存在として将来へ繋げていく。統合とは「キャリアアンカーに戻る」ということで、それが失敗力を磨くことそのものなのです。自分は、どんなときに生きがいを感じたのか?何を達成したときやりがいを感じたか?苦しいときどんな態度をしたか?苦境をどのように乗り越えてきたか?そのとき失ったものはないか?犠牲にしたものはなにか?どんなに犠牲にしたものが多くても決して譲らなかった価値はなにか?そして現在はどうか?そして将来はどういう価値を求めていきたいのか? などなど、大いに悩んでよいのです。


 悩みながらも、まとまりとして統合された人間存在にもどり、その時空の繋がりの中で、新たなキャリアを模索していくこと。*それは、捨ててきた、自分の可能性をもう一度拾いなおすことなのです。そこに、繋がりのあるストーリーがふたたび始まるのです。これがキャリア統合のプロセスです*。
(*:ヒンズー教ではこれをなす時期を林住期といいます。それまで世俗的に生計を営むという現実的な価値観とはまったく違う価値観を持って林に住む時期という意味です。
→よろしければこのコラム読了後、コラム:<住む世界が狭く感じたときには>へどうぞ。)


 キャリア統合のプロセスを経験し自己盲点に気づくのは一人ではむずかしい。でも、悩んでいいのです。大丈夫、必ずご自分を映す鏡もみつかり自己盲点に気づく日がきます。そして、必ず、生きることが楽になります。


 以上の拙稿が、少しでも参考になることを願ってペンを置くことにします。


                                                <以 上>